別珍
概要
別珍とは、表面に毛羽が立っている綿織物のこと。よこ糸でパイルを(輪奈)を作りながら平織り、または綾織りし、表面のパイルを切って毛羽を出します。高級な絹織物の「ベルベット」を綿で表しました。
パイルの種類にはルーズパイル(パイル糸をV字型にたて糸1本で留める)とファストパイル(パイル糸を複数本でW字型に留める)があります。
平織りの「平別珍」よりも綾織りの「綾別珍」の方が組織が密になり毛羽が長くなり、より肉感が増します。またストレッチ性の高い別珍もさまざまなアイテム、特に衣類に役立つことから、重宝されるようになりました。
素材には綿・コットンや、綿とポリエステルの混紡などが使用されます。
別珍の特徴
別珍は肉厚な生地で、触ってみると切られたパイルがふわふわとしていてやわらかな手触りです。光が当たることできらめくツヤにも高級感を感じられます。
暖かみのある見た目や雰囲気だけでなく、実際に保温性にも優れており、秋冬のアイテムに向いています。
高級な絹織物「ベルベット」によく似た風合いですが、素材は綿やポリエステルなので安価で手に入りやすいこともポイント。
また綾別珍はより柔軟で、まるで絹のようなしっとりとした風合いもあり、格別に高級感ただようので、絹素材のベルベットの代替品として活躍してくれるでしょう。
ただし、摩擦や圧力により毛羽が寝たり抜けてしまったりといった避けられない特性もあります。また長時間圧力がかかることでテカってしまう原因にも。
綿素材であれば毛羽がつぶれてもブラッシングで復元できますが、化学繊維を素材にしたものは毛羽を復元できない点にも注意しましょう。
別珍のメリット
- 肉厚で表面はふわふわした手触り
- 控えめなツヤ・光沢感がある
- 暖かみのある見た目
- 保温性が高く秋冬向け
- 安価で手に入りやすい
- 綾別珍はより高級感がある
別珍のデメリット
- 摩擦で毛羽が抜け落ちやすい
- 圧力で毛羽がつぶれたりテカリやすい
- 化学繊維は毛羽を立たせる復元が難しい
その他
- 「別珍」は少し変わった名称ですが、元々は「ビロードのような」という意味の英名「velvetteen」に、日本で当て字をつけたものです。生地の質感が「特別に珍しい」という意味合いもあります。
- ヨーロッパで生産されていた織物が明治時代に輸入され、大正時代に足袋の商標として使用されたことから日本でも普及しました。
- 「別珍」と「コーデュロイ」はともによこパイル織りで、兄弟のようなもの。ただし別珍は毛羽立っているものの平面的で、コーデュロイはたて畝が凹凸を作っているという違いがあります。
- 「別珍」と「ベルベット」はしばしば比較されますが、違いは素材だけではありません。別珍はよこパイル織り、ベルベットはたてパイル織りに絹・レーヨン・フィラメント糸などを使用し、より光沢感があります。