フェルト
概要
フェルト とは、羊毛や獣毛、毛くず、反毛などを集めて圧縮(縮絨)し、繊維同士を絡み合わせることで作る不織布(※)です。
縮絨の方法には、石鹸やソーダなどの温液で濡らして叩いたり揉んだりする方法があります。こうすることで繊維同士が絡まり密着し、さらに収縮して固まって完成です。
フェルトには硬いものからやわらかいものがあり、用途に応じて作り分けられます。新しく細い毛ならかたいフェルト、太く粗い毛ならやわらかいフェルトになるので、硬さや繊維を見比べてみると良いでしょう。
また耐久性、難燃性、耐熱性、耐摩擦性などの効果が必要な場合には、合成繊維などそれぞれの効果を持つ繊維を混ぜて作ることで効果を付与できます。
※不織布とは織らずに作る布のこと。フェルトのように繊維を絡み合わせるものもあれば、合成樹脂や接着剤などでくっつけて布地にします。
フェルトの特徴
フェルトは羊毛や獣毛でできているため、保温性・吸湿性・保水性などが高いのが特徴。保温性の高さを活かして冬用のスリッパやベストなどに用いられます。
防音効果や、衝撃の緩和効果などもあることから、ピアノのハンマーフェルトに用いられていることでも有名です。ハンマーフェルトは音質を左右するため、重要な役割なんですね。
また裁断してもほつれにくいことから手芸の定番素材としても人気。手芸初心者向けの材料として手芸店に並んでいることも。その人気の高さから、自分で羊毛を縮絨させてオリジナルのフェルトを作る愛好家も多いです。
他にも敷物や靴の中敷き、フェルトペン、テニスボール、カバン、帽子など幅広い用途で取り入れられています。
その一方でフェルトに不向きなのが、衣料としての活用です。肌になじみにくいだけでなく、伸縮性がなかったり、引っ張りや摩擦に弱いことから、衣料にはほとんど使われていません。
使われているとすれば、伸縮性が不要でインナーの上から着るジャケットやベストが多いでしょう。
摩擦に弱いため、お手入れは洗濯ではなく、硬く絞った布で汚れを拭き取り陰干しするようにしましょう。
フェルトのメリット
- 保温性が高い
- 吸湿性、保水性が高く水をよく含む
- 音を吸収し防音効果がある
- 衝撃を緩和しやすい
- 裁断してもほつれにくい
- 鮮やかなカラーバリエーション
- 用途に合わせて硬さを変えられる
- 難燃性などの必要な効果を付与しやすい
フェルトのデメリット
- 肌に馴染みにくいので衣料には不向き
- 伸縮性がなく引っ張りに弱い
- 摩擦に弱い
その他
- 動物の毛を縮絨する過程を「フェルティング」と言い、フェルトという名前の生地になります。他にも名前の由来として、「filt(濾す)」や「filter(フィルター)」などが挙げられます。
- 別名には「圧縮フェルト」や「プレス・フェルト」などがあります。
- 本来のフェルトと似た効果や風合いを再現した「織フェルト」や「フェルト・クロス」と呼ばれる生地もあります。これは紡毛糸を織った毛織物に縮絨加工を行い、起毛したもの。不織布とは違い織って作られているのが特徴です。
- ウールなどの毛織物に対し、日常生活で継続的に圧力がかかり、結果として意図せず縮絨することを「フェルト状になる」と言います。たとえば学生服やスーツのズボンなどは長時間座っていることでお尻の部分が潰れてテカって見えることがありますが、これが「フェルト状」という状態です。