ファー
概要
ファーとは、動物の毛皮のこと。体毛を残したまま、腐食しないようになめし加工した生地です。本物の動物の毛皮を「リアル・ファー」、人工的に作られた毛皮「フェイク・ファー」と呼び、区別をつけることもあります。
ファーは皮(皮膚)の部分と毛の部分があり、かつ毛の部分はかための刺毛、極細でやわらい綿毛(柔毛)で構成されています。刺毛は体を外敵から保護し、綿毛は密生することで空気の層を作り、体温の低下を防ぐ防寒の役割をそれぞれ果たしているのです。
毛皮の種類は動物の種類だけあると言えます。※ファーの種類は下部に掲載
良い毛皮(=高級な毛皮)の条件には次のようなものがあります。
- 刺毛と綿毛のバランスが良い
- 刺毛はまっすぐ伸び、綿毛が密集している
- 光沢があり背筋の濃いラインが鮮明
- 毛がしっとりとしたやわらかさで、皮もしなやか
- 手触りがよくて毛に弾力性がある
ファーの特徴
ファーは動物からとれるため、その動物が持つ毛皮の個性がそのまま現れています。ちなみに、その動物特有の色彩や模様を表現しているのは刺毛です。
刺毛には弾力性と耐水性があり、そんな刺毛の周りに密集する綿毛によってソフトな触り心地と保温力を高めています。ゴージャスなイメージ通り、実際に高価な生地です。
ただし個体間によって毛の長さや色味が異なり、同じ動物でもまったく同じ毛皮が取れるわけではありません。同じ個体でも部位によって毛の生え方のばらつきが出ることもあります。
また生き物からとれる生地なので、どうしても毛のすり切れや自然劣化は防げません。においも残りやすいです。
ファーのメリット
- 弾力性がある
- 耐水性がある
- バツグンの保温力
- やわらかな手触り
- 自然由来の光沢感がある
- 耐久性が高い
- 高級素材
ファーのデメリット
- 環境問題、動物愛護の観点で好まない人もいる
- 個体間によって毛質が左右される
- 正しく保管しないと虫食いやカビが生じる
- 自然劣化・退色・変色が生じやすい
- においが残りやすい
- 熱に弱い
- 高級品のため手を出しにくい
クリーニングに出すと、逆に油の酸化、硬化、破損をするおそれもあります。湿気を避けて保管し、お手入れは基本的にブラッシングのみです。
ファーの種類
ラビット | ファーの中でも安価で最もポピュラー。刺毛がやわらかいため耐久性は低め。 |
レッキス | ラビットの変種で、やわらかい綿毛だけで構成されている。 |
ミンク | 綿毛が多くとてもやわらかい。色ツヤ・耐久性・保温力どれをとっても申し分なく、最高級の毛皮。 |
ラム | 毛足が長くカールした綿毛が独特な風合いになっている。ごわごわして見えるが、実際はやわらかく、染色しやすい。 |
セーブル(黒テン) | こげ茶からベージュまで黄褐色の色をしており、ミンクよりも刺毛が長く不ふわふわしている。 |
ラクーン | いわゆるアライグマ。長めの刺毛と暗色の綿毛が特徴でボリュームがあり、ミリタリー系に使われやすい。 |
フォックス | シルバー、ブルー、レッドなど色が豊富でボリュームがある。人気のファーのひとつ。 |
その他
- 人類最古の衣服。古代エジプト時代以前、防寒目的に狩猟動物の毛皮を衣料として用いたのがはじまりとされています。中世ヨーロッパでは権力を象徴する衣服として用いられました。
- ウールやカシミヤなどは動物の体毛だけを刈り取り紡糸したもの、ファーは動物の毛皮を体毛を残したままはぎ取って加工したものという違いがあります。
- 環境問題や動物愛護の意識が高まったことで、著名人をはじめリアル・ファーを使用しないと宣言した反対運動が世界各国で起こっています。他方、毛皮は土に還る素材だとし、野生動物を自然の恩恵としてうまく活用することが持続可能な利用であると主張する声もあります。