原料染め
概要
原料染めは先染めの一種で、糸になる前の繊維の状態で染める方法のことです。「ストックダイ」とも呼ばれます。 天然繊維の場合は紡績前の紡ぎとったままの状態で、化学繊維はポリマー(紡糸原液)の状態で染色します。原料染めはさらに「原毛染め/ばら毛染め」と「原着染め」の2種類があります。※それぞれの種類を下部に記載。
もちろん綿、麻などの植物天然繊維でも紡ぎ出した状態から染める原料染めが行えます。
原料染めの特徴
繊維の段階で1本1本染め上げるため、繊維は芯まで染まります。特に原毛染め/ばら毛染めでは繊維の中心部まで染色、原着染めではポリマーそのものに色が付くため、ほとんど色落ちしません。 仕上がりは色ムラもなく、より鮮やかで深みのある色になるのが特徴です。繊維が持つ独特の風合いも損なわず、羊毛やカシミアなど風合いが重要とされる素材に向いています。 また複数の色を混ぜることで、ニュアンスのある色味が出せます。同系色であればより深みが出て、反対色であればカラフルになるなど、遊び心のある色を出すことも可能です。 しかし原料染めには時間がかかるため、早い段階で色を決めなければいけません。よって、その時代の流行色を取り入れにくく、一度の生産ロットが大きいので融通が利きづらい点に注意しましょう。
原料染めのメリット
- 染色堅牢度が高く、色が長持ちする
- 鮮やかに発色し、色ムラがない
- 日焼けや水濡れなどによる変色・色落ち・色移りが少ない
- 2色以上の混色が可能
- 高級布地の風合いを保てる
原料染めのデメリット
- 色の流行に合わせられない
- 時間も手間もかかる
- たくさんの染料を使用しコストがかかる
- 原液染めをした生地は価格が高くなる
原毛染め/ばら毛染めと原着染めの違い
原毛染め/ばら毛染め | 羊毛やカシミヤなどの原毛に対して行う染め方です。採取後に精錬・漂白した状態から染め始めます。「ばら毛」とは「わた」のこと。 |
原着染め | 「原液着色」のことで、ナイロンやポリエステルなど化学繊維の元となる紡糸原液に着色剤を入れます。 |
その他
- 一流ブランドのカシミヤは原毛染めされているものがほとんどで、手間・時間がかかっているぶん、高品質に仕上げられています。一方で低価格のカシミヤは紡績した状態から染める「糸染め」を採用し、手間・時間を大幅に短縮しているものが多いです。
- 原毛染めしたものを紡績の工程で2色以上混ぜ、カラフルなニット糸を作ることも可能です。手編み用の毛糸などに人気。
- 2〜3色に原毛染め/ばら毛染めしたウールを混紡することで、程よく霜降り状の生地が出来上がります。