トップ染め
概要
トップ染めは先染めの一種。糸になる前の短繊維を太いひも状にして、スライバーに巻き取った「トップ」の状態で染色する方法です。 繊維のままの状態で染める「原料染め」と糸にしてから染める「糸染め」の中間で行う染め方。主に毛の先染め手法として用いられています。 トップを1つの色で染色してから、色を組み合わせながら細く長い糸に紡績したものを「トップ糸」といい、色の紡ぎ方で3種類に分けられます。※トップ糸の種類を下部に記載
どちらかといえば、ウールやアカシアなどの毛織物に用いられることが多いですが、綿などにも用いられます。
トップ染めの特徴
まだ糸に紡ぐ前に染めてしまうことで芯までしっかり染まり、染色堅牢度が高く、色落ちしにくくなります。色ムラもなく、均一に染色できるのも特徴です。 また深みのある色を出せます。染料の色そのものではなく、トップ糸を組み合わせることで絶妙な色味を表現できるのが魅力です。特に、あたたかみのある毛織物との相性がバツグン。 しかし1色を作るのに2〜3時間かかり、染色から製品化までにかなりの時間を要します。スピード感が求められるトレンド製品にはあまり向いていません。 トップ染めでは少しでもコストを下げるべくまとめて大量に染色するため、1回のロットは多いです。少量だけ染色できないことも、トレンド製品に向かない理由のひとつでしょう。
トップ染めのメリット
- 染色堅牢度が高く、色が長持ちする
- 色ムラがなく均一に染色しやすい
- 鮮やかで深みのある発色
- トップ糸を組み合わせて表現自在
- 高級感がある
トップ染めのデメリット
- 染色コストが高い
- トレンドには不向き
- 1回の染色のロットが大きい
トップ糸の種類
無地糸 | 色のトップ糸だけで紡いだ糸 |
霜降糸 | 白または淡色、そして濃色の2種類以上のトップ糸を混紡し、霜降り状にした糸 |
杢糸 | 2色以上のトップ糸を混ぜたカラフルで鮮やかな糸 |
その他
- 名前の由来は、西洋のこま(top)に似ていることからトップ染めと呼ばれます。またスライバーという道具を使うため、欧米では「slivering」とも呼ばれます。
- 深みのある色を出せるため、よく高級品の製作に活用されます。たとえば深みのあるカラーの高級服地は、一見無地に見えますが、実は複数色のトップ糸を混ぜた杢糸で作られているものが多いです。
- 「トップ」はこまのように見えるものから、ボール状に見えるものまでさまざま。トップではまだ繊維の束(動物のわた毛のような状態)でしかなく、紡績してはじめて糸として利用できるようになります。