浸染(後染め)
概要
浸染とは織物やニットを反物の状態で染料に浸し、染色する後染めの方法です。染料に漬けるだけでなく、ときには媒染剤によって発色を促すこともあります。
反物の状態で染色しやすくするために、前もって糊抜きや精錬、漂白を行います。生地に糊や汚れ、また繊維のペクチンやタンパク質が残っていると綺麗に染色できない可能性があるためです。
前処理をした後に染料を溶かした液体に浸し、じっくりと染色します。染色法としては、冷浴(低温染色)・温浴(中温染色)・煮浴(高温染色)など、温度と時間による方法があります。最後に後処理・仕上げ・加工などを行い、完成です。
簡単な染色方法なので、一般家庭や自宅でも挑戦しやすいですよ。
浸染(後染め)の特徴
先染めは繊維を染めてから紡績したり糸にしたりする一方で、後染めの代表である浸染はまず反物にしてから、一気に染めます。そのため一度の浸染で大量に染めることができ、作業や生産をかなり効率化できることがメリットです。
しかし先染めと比べると、どうしても染色堅牢度が劣りやすいです。糸1本1本をしっかり染色できないため、色ムラができしまうこともあります。
また発色の良さも先染めより劣り、深みと味わいのある色を出すことは難しいでしょう。
ただし、そういった色ムラの欠点を活かして、表情のある生地を作ることができます。染色性の異なる糸を混ぜて織られた生地の場合、一方の糸は染まり、もう一方の糸は染まらないことも。すると偶発的に模様が生み出され、世界でひとつだけの生地になるのです。
浸染のメリット
- 一度で大量に染色でき効率的
- 生産性が高い
- 色ムラを活かし表情のある生地を作れる
- 家庭でも真似しやすい
浸染のデメリット
- 染色堅牢度が低く、色落ちしやすい
- 発色性が低い
- 色ムラができやすい
その他
- 「浸染」の他にもさまざまな呼び名があります。反物の状態で染めることから「反染め」、染料にずぶずぶと浸すことから「ずぶ染め」、反物を丸ごと染めることから「丸染め」、1色のみに染め上げるから「無地染め」など。英語では「piece dye(ピースダイ)」と言います。
- 浸染のひとつとして、布の一部を絞った状態で染料に浸す方法(絞染)や、ロウで一部に模様などを書いてから染料に浸す方法(蝋染)もあります。これらの方法で染色した生地は、一部に模様ができることが特徴です。
- ポリエステルのジョーゼットなどの染色は、高温高圧液流染色機で効率よく行われます。