捺染
概要
捺染とは、織り上げた反物に顔料や染料を溶かした色糊で模様を生地の上に定着させることです。現代は「プリント」という言葉で広く定着している、後染めの方法のひとつです。
捺染の方法は、一つひとつ手描きする工芸的なものから、機械で行う大量生産向きの工業的なものまであります。
日本にも古くから伝統的な捺染方法があります。たとえば手描きや型紙を用いた「更紗」「友禅」「小紋」「絞り染め」など、着物で見かけることが多いです。現代では、熟練した職人のみが伝統的な捺染方法を受け継いでいます。
捺染の特徴
捺染の特徴は、先染めと比べるとより効率的に染色できることです。
現代のプリント生地にも多く取り入れられており、企画から生産までにかかる時間や手間などが少ないため、トレンドに合った生地やアイテムを作ることができます。
しかし後染めなので、どうしても染色堅牢度が劣ります。捺染は生地を“染める”というよりも、色糊を使って生地に“色を定着させる”方法なので、洗濯時に色落ちしやすいです。
ただ浸染と比べると色ムラは少なく、柄や模様を自由に描けることが大きなポイント。色とパターンでさまざまな表現ができます。
捺染のメリット
- 効率的に染色でき、生産性が高い
- トレンドに合わせやすい
- 柄や模様の表現力が高い
- 浸染と比べると色ムラが少ない
捺染のデメリット
- 染色堅牢度が低く色落ちしやすい
- 細かい模様を描こうとすると手間がかかる
捺染のやり方
直接捺染 | 糊に染料を混ぜ、手描きで模様を描いたり、型紙を使って生地に直接染色する方法。「更紗」「友禅」などがある。 |
防染 | 着色しない部分にのみ糊をつけて模様を表し、その後全体を染色する。糊を付けた部分は染まらず白く浮かび上がる。「小紋」は型紙を使った防染、「絞り染め」は糸で生地を絞る防染。 |
抜染 | あらかじめ生地全体を染色してから、模様を表したい部分のみ脱色して色を抜く。 |
スクリーン捺染 | 枠に薄い布を張った「スクリーン」を用意し、模様の部分は色が通るように穴を開け、他の部分は織目をつぶす。その後スクリーンを布の上に置き、上から染料を塗ることで色が通る部分だけが染色される。 |
その他
- 反物前面に柄をバランス良く繰り返すことも特徴で、柄の繰り返しの1構図を「リピート」と言います。
- 高級ブランドのスカーフやワンピースなどに見られる「パネル柄」(そのアイテム自体で1枚の絵画になる柄)も捺染で表現されます。製品の形に合わせて柄が途切れないようにプリントされるため、手間とコストがかかっているのです。