吸水速乾加工
概要
吸水速乾加工とは、繊維を改良して水分を吸水・拡散しやすいようにする機能加工です。
吸水性とは、生地が水分を早く吸収する機能。速乾性とは、水分を吸った生地が早く乾く機能のこと。
ポリエステルやナイロンなどの化学繊維は速乾性は高いものの、天然繊維に比べると吸水性が低く、汗を吸いにくいです。その短所を補うための加工法で、吸水性を持たせるだけで「吸水速乾生地」に生まれ変わります。
吸水速乾加工のやり方は次の3つです。
- 異形断面の糸を使い、毛細現象を起こして吸水性・速乾性を高める
- 親水性に優れた加工材を表面に塗布する
- 生地の構造を細く・太くしたり、空洞にしたり、二重にしたりする
吸水速乾加工の特徴
吸水性だけある生地は、水はよく吸いますが素早く拡散できないので、ベタベタした着心地が続きます。一方で速乾性だけある生地は、そもそも拡散する水分がないため宝の持ち腐れです。
吸水速乾加工を施すことで「吸水性」「速乾性」の両方を高めることができるので、素早く水分(汗)を吸い、素早く拡散させられるようになります。
着用中の汗による不快感を防げるでしょう。また濡れたの服を長時間着ていると体が冷えてしまいますが、その心配も必要なくなります。洗濯後に生地が乾きやすくなるというメリットも。
特にスポーツウェアや夏用の衣類などに用いられることが多いですが、近年はビジネス用のYシャツやスーツに施されることも多いです。
さらに吸水速乾加工は、水分率が低いことで起こる静電気を抑える効果もあります。冬に起こりやすい静電気をも抑えることで、通年使えるスーツを作れるというわけです。
ただし、吸水性を高めてしまうことで傷みやすくなる生地(濡れると強度が低下するシルクやレーヨンなど)もあるため、注意しましょう。
吸水速乾加工のメリット
- 吸水性・速乾性の両方の機能性が向上する
- 汗による不快感を防げる
- 濡れた服による体の冷えを防ぐ
- 洗濯したあとは乾きやすい
- 静電気を抑える効果
- 加工方法が多くさまざまな種類の生地に加工できる
吸水速乾加工のデメリット
- 吸水性により傷みやすくなる生地もある
- 表面に加工材を塗布したものは洗濯で機能が落ちやすい
その他
- 主に吸い取る水分は汗なので、吸水速乾加工は「吸汗加工」「吸汗速乾」とも呼ばれ、近年のクールビズなどで人気が高まっています。
- 近年は吸水速乾加工だけに頼らず、生地と肌の接地面積を減らしたり、涼しげなタッチにしたりなど、夏場でも快適に着られる衣料の研究が進んでいます。
- 吸水速乾加工を施すか、それとも撥水加工を施すかはケースバイケースです。撥水加工は水を弾くためレインコートなどに向いていますが、汗も吸い取らなくなるためベタつきが気になります。